ためいきをほどきたい 街で暮らしているといろいろな人間を見る。
ひとりで生きていたころは人間という種のかたまりがあるくらいの認識しかなかった。
始と契約したからなのか、始から眼鏡をもらったからなのか、個体の識別ができるようになってくるといろいろと面白い。
基本的には友好的だけれど、陰の種族と同じように同族で小競り合いもするんだなとか。獄族と似ているところでもある。
それから仲が良いというのにも度合いがあるらしいことはわかってきた。
獄族はひとりで生まれてひとりで生きていくのが『普通』だから、人間のいう仲良しとは違う。
隼は誰かと話している方が楽しいらしいけれど、あれは特殊というか、ずっとずっと長く生きてきたからだろう。歳をとった獄族ほどよく話すからね。
その隼と俺は、人間から見ると友人関係にあると言うらしい。葵くんと夜と恋からそう言われた。
お互いに存在は知っているし、取り立てて争う理由がないから敵対していないだけのことなのに、それを友人と言うのか。
面白かったから始に話してみたのだけれど、何故かため息をつかれてしまった。
彼らの定義で言えば、俺と始も友人でもあるんでしょう、と言ったらまたため息。
始は俺との関係を変えたがっているみたいなのに、どうしたいかを言ってくれない。
俺がわからなければ意味がないらしいのだけれど、わからないものをわかれと言う始は案外わがままだ。
今までの俺なら他人から押しつけられる『わからないなにか』をわかろうなんて思わなかった。
わかりたい、と思うのは相手が始だからで、このところずっと難しそうな顔をしている始に笑ってほしいと思っている。
だからめんどうくさくはあるけれど、始が俺に伝えたいことの意味を理解するまでは諦めないつもり。