気づいてしまった しばらく姿を見せなかった獄族が、海の屋敷にいるとは思いもよらなかった。
向こうも同じらしく、姿を見せた始に目を丸くしている。
最強の種族であるというのにふわふわとして掴みどころのないこの獄族が見せる新しい表情は心が躍った。
「それで? 海、おまえの知り合いなのか?」
ひとまず海に聞いてみる。長い付き合いの中で、海が紹介した獄族はひとりしかいなかったが、予想通り海も知らなかったらしい。
「始の知り合いみたいだけど、俺の知り合いじゃあないな。隼、おまえの友達か?」
「そうだよ。海を紹介しようと思って連れてきたのだけれど、海のお友達とも知り合いだったとはびっくりだね」
一年前、海の契約者として紹介された隼が嬉しそうに白銀の髪を揺らす。
状況がわかっていないのは『ひみつさん』だけらしい。なるほど、と始は状況を理解した。
勝手知ったる海の部屋だ、人数分の椅子を持ちだしてひとつに座った。
始に続いて隼が座り、海がお茶を入れに離れる。渋る顔をしていた『ひみつさん』は隼に促されて始の向かいへ座った。
「おまえが隼や海と知り合いとは知らなかったな」
「人間の方は初めて会ったけどね」
「そうか」
何故か彼の答えにほっとする。
この男をもっと知りたいと思うと同時に、一番知っているのは自分でありたいという欲求があることに始は気づいてしまっていた。