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    深夜番組「いい月だ……。今晩は。この時間は深夜の自由騎士団『巡りの大樹』騎士団長執務室から、俺こと副騎士団長ルヴァイドがお送りする」
    「わあ、何か始めましたね。いつになく機嫌がいいですね」
     それとも2日連続の徹夜で参っているんでしょうか、とこれまた目の下にクマをつくったシャムロックが浮かれている。
     手を後ろにまわして立っていたルヴァイドが、ソファに向かってぴしりと指をさした。
    「観客、黙れ」
     黙った。
     ルヴァイドはこほん、とせきをひとつして話しはじめた。
    「昨今の兵器産業の発展はめざましいものがある。あらゆる武器は高水準の技術により改良に改良を重ねられ、20年前の姿をそのまま保っているものは少ない。―――この説明をメモにとる必要はないぞ」
    「とってませんけど……」
    「いまや10年ひと昔どころか半年でひと昔といわれるこの業界、新商品を買って浮かれていたら3ヶ月後にはより性能のよいものが店頭に並び、あれよあれよという間に手元の愛器は型落ち中古、ということはザラにある話だ」
    「わかりますそれ! 2万バームで買った剣が翌日店に行ったら2千バームになっているのを見たときは、私も悲しかったなあ」
     それはただのぼったくりだ、とは言わずにルヴァイドは続けた。
    「だがこれから見せる商品については、もうそんな心配をする必要はない。なぜならこの武器は未来の武器、約20年は時代を先どりした全くあたらしい形の兵器だからだ」
    「おおっ」
    「驚くのはまだ早い! まだ何も見せてはおらん!」
    「す、すいません」
     意外と難しいなとシャムロックはこうべを垂れた。
    「今後20年と7ヶ月は武器界の頂点に君臨するだろうこの商品の名は―――サンダーエレクトロランス06!」
     言葉とともにルヴァイドは、背後から一本の槍を取りだして見せた。
    「……by ファナン」
     ファナンで買ってきたらしい。
    「おおっ」
     今度こそシャムロックは正しく驚いてみせた。
    「すごい名前だ! すごくあやしい!」
     大体06ってなんて半端な、あとの5つが非常に気になりますね、と口々に言う観客を、ルヴァイドは得意げに笑みながら片手で制した。
    「まあ、落ちつけ。この槍の真価は名前ではなくその中身にある」
    「大抵そうですよね……で、その中身とは」
    「ふむ。このヤリは一見ふつうのヤリの姿をしているが、実は特別な機能を多く備えているのだ」
     一見普通のヤリ―――シャムロックは、槍の尻尾から出ている全然普通じゃないコードには、触れないでおいた。多分これから説明があるのだろう。
    「敵と遭遇、対峙。そんな時にこのボタンを押せば、瞬く間に電気が、」
     言葉を切ってルヴァイドは槍を見つめた。シャムロックも見つめた。
    「……」
    「……」
     カチ、カチと時計の音が響く中、ばちりと線香花火のような音が混じりはじめた。ゆっくりと、槍の穂先が青白く光りだす。
    「―――電気が槍にまわり、ヒットした瞬間のダメージを激増することができる仕組みになっている」
    「ほうほう、電気が!」
     火花がばつんと飛んだ。
    「これで攻撃されればカミナリに打たれたかのように相手は黒こげ、ひとたまりもない」
    「一撃必殺というわけですか」
     シャムロックは素直に感心してうなずいた。
    「たとえターゲットをきっちりとらえられなかった場合でもこのエレクトロランス06ならば安心だ。
     相手に攻撃をかわされた! しまった、カウンターがくるやもしれぬ! ……そんな時は、このヤリの穂先をそっと相手のよろいにつけてやる。すると、攻撃をかわしたと思って油断していた敵の体にはまたたくまに電気がびりりと流れ、おどろいてカウンターをくりだすどころではなくなるだろう。その隙に、こちらは体勢をたてなおすことができるのだ」
    「いわゆる絶対攻撃ですね。それはすごい。実際画期的ですよ、どれ……」
    「触るな!」
     近づいたシャムロックを、ルヴァイドは一喝した。シャムロックはびっくりして跳ねあがる。
    「ここに流れている電流は、一撃で象をも殺す」
     槍からでてる白い光に顔を下から照らされながら、ルヴァイドが声を低めて言った。
     シャムロックはごくりとつばを飲む。
    見ればルヴァイドは、自分の体から槍を持った手をぎりぎりまで離している。
     ふたりでしばし、ばちばちと音を跳ねさせる穂先を眺めた。
    「ねえルヴァイド。これ、使い手にとってもかなり危険なんじゃ―――」
    「さらにこれだけではないぞ」
    「ぎゃー、こっち向けないでください!」
     ルヴァイドはシャムロックに突きつけていた槍のスイッチを切った。
    「この槍の柄の部分はかなりの弾力性を持っているのだ」
     ルヴァイドが両端をつかんで力をこめると、案外たやすく柄はしなった。
    「その気になれば、棒高跳びをすることとて可能だ」
    「わあ、踏み台いらずですね」
    「つつましやかな身長の槍手に最適だ」
    「が、該当者一名に思い至りました」
    「奇遇だな、俺の知り合いにも一人いる。この槍で彼のストレスが減れば、午後の紅茶もおいしくなること間違いなしだ」
    「怒られる回数も激減しますね。いいことずくめだ。でも、これだけ多機能だと高いんじゃ」
     シャムロックの言葉に、ルヴァイドは不敵に笑ってみせた。
    「ふん、聞いて驚け。このサンダーエレクトロランス06の値段は、この本体と電気を通すコード、そして」
     コードをぐいっと引っぱる。すると物陰から大きな四角い箱がずるずると顔を出した。
    「ロレイラル製の小型発電機の3点セットで79800バーム!」
    「ななきゅっぱ! それはたか……」
    「まだまだ」
     ルヴァイドは背中から手品のように、大きな鍋ぶたもどきをとりだした。
    「槍をふるう最中おろそかになりがちな防御を引き受けてくれる、この円形盾をつけてやる。槍本体に装着可能だから、手をふさがれることもない」
     そして空いた手で発電機を抱えることになるのである。
    「へえ、鉄製で丈夫そうですね」
    「本体、コード、発電機、そして盾の4点セットでお値段79800バーム!」
    「4点セットで79800バーム! おまけの盾は要らないから値段を下げてくれ、というのは」
     槍のスイッチを入れようとするルヴァイドに、シャムロックはあわてて発言を撤回した。
    「さらに今買ったらサンダーエレクトロランス06がもう一本ついてきた」
    「えええっ! 2本も買ったんですか、イオスに怒られますよ」
    「ふっ、案ずるな。なんと値段は据え置きだ」
     おおっ、と歓声があがった。
    「では2組でななきゅっぱですか? それは安い!気がする! そんなに安くて良いんですか」
    「よいのだ。お客さまは神さま仏さま、招き猫さまだ」
    「?」
    「と、店の主人が言っていた」
    「よくわかりませんが、素晴らしいですよルヴァイド。見直しました」
     今にも抱きつかんばかりのオーバーアクションに、ルヴァイドはすっかり気を良くした。
    「世辞はよい……」
    「いいえ、大したものです。買い物上手ですよ」
    「この商品が気になるなら、お前も購入するといい。今なら間に合う」
    「え、はい! 連絡先は」
    「ファナンのポワソストリートを一本それたところの―――」
     シャムロックはあわててメモをとった。
    「直接訪ねるか、三色のろしで問い合わせてくれとのことだ。店先への矢文でもOKだぞ」
    「ああ、ルヴァイド。商品を手に入れるのが楽しみですよ」
    「うむ」
     満足感と達成感で晴々しくうなずいたルヴァイドは、ふと思いついたように言った。
    「ああ、領収書を忘れずにもらってくるようにな。申告すれば騎士団から金が下りるだろう」
    「こんなにステキな商品ですからね。きっとイオスも喜んで了承してくれるでしょう」
     



    「―――返品してらっしゃい」
     ええ、と不平の声をあげる首脳ふたりに、イオスは肩を震わせて言い放った。
    yoshi1104 Link Message Mute
    2018/09/29 3:38:51

    深夜番組

    (ルヴァイド+シャムロック)

    ##サモンナイト

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