イラストを魅せる。護る。究極のイラストSNS。

GALLERIA[ギャレリア]は創作活動を支援する豊富な機能を揃えた創作SNSです。

  • 1 / 1
    しおり
    1 / 1
    しおり
     扉を開けて入ってきたその人は、表情のない、無機的な顔をしていた。
     僕は椅子に座ったまま、外の薄い光をさえぎって立つ姿を見上げた。褪せた黒の髪の、すこし痩せた男。身なりは良い。僕とまるで正反対に。
     ここの代表者なのかもしれない。だとしたらこれから僕らが保護を求めて縋りつく相手だ。
     立ち上がって愛想をふりまくべきか―――しかしそんな気力は微塵も残っていなかった。喉と足が鉛のようで、動くことも声をだすこともできない。僕は、疲れきっていた。
    「貴方がライル一族の長か」
     男が言った。僕はかすかに頷いた。
     側に控えていた者から何事か耳にささやかれたその男は、じっと無言の僕を見据えている。権力者にふさわしい、威圧的な視線だ。
     僕は痩せた指をきつく組み合わせ、それでも視線はそらせずに、男を見上げ続けた。

     ふいに。
     彼は顔をほころばせた。何の前触れもなく。
     氷の一瞬の溶解を思わせる笑みだった。
     目を見張る僕に、彼は笑いながら、
    「よろしく」
    そう言った。
     そこには媚びでも優越でもない、ただ無条件に寄りかかってくる懐こさがあった。
     瞬間、僕はそれまで抱えていた暗い感情を忘れた。
     目の前にさし伸ばされた意外と小さな手を、しがみつくように握りしめる。何も考えずに。

     ―――これが巡りのはじまり。

     それからは時が繰り返されていく。
     平穏と幾らかの波乱を含む日々が過ぎ、彼は死に、嘆く僕も死に、彼の子供は小さな手を差し伸ばして僕の子供の手を握りしめ、その子らも死に、さらにその子供たちが手を差し伸べ差し伸ばされて握り合い―――。

     螺旋状につづいていく糸。
     それは長い時も経たず、過ちの時を境に途切れたのだと信じていた。
     だが糸は「僕」たちの気づかないところで今もなお繋がり、廻っていたのだ。それを知った。

    「よろしく、……ネス、ティ」
     幾百番目かの複製された生で、時は再開される。
     強張った顔をふいに綻ばせた少女がさしのばした、小さなその手を、僕は何も考えずに握りしめた。
     それははるか昔からの決まりごと。からだの底に刻まれた定め。
    yoshi1104 Link Message Mute
    2018/09/29 3:40:48

    (ネスティ+トリス)

    ##サモンナイト

    more...
    作者が共有を許可していません Love ステキと思ったらハートを送ろう!ログイン不要です。ログインするとハートをカスタマイズできます。
    200 reply
    転載
    NG
    クレジット非表示
    NG
    商用利用
    NG
    改変
    NG
    ライセンス改変
    NG
    保存閲覧
    NG
    URLの共有
    NG
    模写・トレース
    NG
  • CONNECT この作品とコネクトしている作品